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「確率変数の収束と大数の完全法則 − 少しマニアックな確率論入門」 共立出版 2019年02月刊行 服部哲弥

(どこかにおいでと願っている,)興味を持ち,その先に進んでくださる方々に,届きますように…

「確率変数の収束と大数の完全法則 − 少しマニアックな確率論入門」 服部哲弥 著,共立出版,2900円+税, 192頁, ISBN978-4320113503

共立出版社       Amazon.co.jp/dp/4320113500
確率変数の収束と大数の完全法則 − 少しマニアックな確率論入門 服部哲弥

「確率変数の収束と大数の完全法則」補足と訂正 (update 2019/03/04)
念のためお買い求め後お読みいただく前に, 上記リンクの補足・訂正の追加の有無をご確認いただければさいわいです.

前口上

前世紀に比べると確率論の和書の基礎教科書もずいぶん賑わって, 文化の香りめでたいですが, いくつか,(分厚い)洋書の基礎教科書では見かけるけど和書では見ない 基礎事項が見受けられるので,その中から,大数の完全法則を含む いくつかの事項を選んで, そこに向かって基礎事項を配置した教科書を書いてみました.

Amazon.co.jpのランキングを記述する 「確率順位付け模型」の深化版, 「強度が位置依存性を持つ確率順位付け模型」の, 流体力学極限の存在を証明する際の「扇の要」の位置にある, 「流れが定める強度に従う確率順位付け模型」の収束証明 (非減少関数値の大数の完全法則,あるいは,一般化Glivenko-Cantelliの定理)が 実数値の大数の完全法則に帰着します. 少なくともその意味で本書は基礎教科書の役割を担います.

このほか本書の隠れテーマとして, 現代的な数理統計学の確率論側からの理解のためのの初等事項のうち, 伝統的な初等確率論教科書でこぼれ落ちがちな内容を盛り込む, ということがあります. グリヴェンコ・カンテリの定理,それから, ラーデマッヘル列(符号の列)に基づく平均から 有界差異法を経由してヘフディンの補題を適用して集中不等式を得る道筋, などを本書はていねいに説明しています. たとえば,楠岡成雄先生の2019年12月の 「機械学習に関する一考察」という表題の東大数理の談話会の内容の理解にとって, 本書の内容は必要条件と言えます. 詳しくは下記項目8. 「機械学習に関する一考察」を 参照下さい.

ルベーグ積分の入試問題問題集を勉強してくださったご縁で,測度論の直系の子孫である現代確率論に興味を持ってくださった方々にも,本書をご一考いただければさいわいです.


目次

1 大数の法則
1.1 積み上げることと正負の打ち消しと
1.2 大数の強法則
1.3 ランダムウォークとアボガドロ数
1.4 大数の完全法則の証明のあらすじ
1.5 グリヴェンコ・カンテリの定理
2 実確率変数の不等式と収束のオーソドックスな入門
2.1 基礎不等式
2.2 収束と距離
2.3 実確率変数列の確率収束
2.4 実確率変数列の概収束
2.5 実確率変数列の完全収束
3 独立実確率変数列の大数の完全法則の証明
3.1 大数の完全法則の証明
3.2 ヒンチンの不等式
3.3 イェンセンの不等式と条件付き期待値
3.4 マルチンケヴィチ・ジグムンドの不等式
3.5 大数の強法則の初等的証明
4 セミノルム付き線形空間の少しマニアックな入門
4.1 セミノルム付き線形空間
4.2 ヒンチンの不等式の一般化(性質Kr,qとK'U,r,q
4.3 有限次元線形空間のノルム
4.4 有限次元線形空間は性質K2,qを持つ
4.5 有界差異法によるK'U,r,qのq=1への帰着
5 有界変動関数の空間と一般化したグリヴェンコ・カンテリの定理
5.1 単調関数の基礎性質
5.2 有界変動関数の線形空間BV(R)
5.3 BV(R)は性質Kr,qを持たないが性質K'U,2,qを持つ
5.4 単調関数値に一般化したグリヴェンコ・カンテリの定理
5.5 Lp空間は性質Kmin{2,p},qを持つ
6 一般化ヒンチンの不等式と線形空間値大数の完全法則
6.1 パンドラの箱
6.2 セミノルム付き線形空間値列の完全収束
6.3 確率空間と確率変数列への要請
6.4 セミノルム付き線形空間値の大数の完全法則
6.5 例:一様評価のノルム付き線形空間再訪


予告が出てから書店に届くまでの長い待ち時間(と出版されてから皆さんに見つけていただくまでのさらに長い時間)


8. 「機械学習に関する一考察」

本書の隠れテーマには, 現代的な数理統計学的のための確率論の初等事項のうち, 伝統的な初等確率論教科書でこぼれ落ちがちな内容を盛り込む, ということがありました. (ツイッターでフォロー関係なって下さって, 関心の動向を教えて下さった関係諸分野の皆様, どうもありがとうございました.) たとえばグリヴェンコ・カンテリの定理,それから, ラーデマッヘル列(符号の列)に基づく平均から 有界差異法を経由してヘフディンの補題を適用して集中不等式を得る道筋, は数理統計学への確率論的方法の適用の初等事項として, 確率論の初等教科書からこれまでこぼれていたように思います.

確率解析と数理ファイナンスを研究されていた楠岡成雄先生がいつの間にか 機械学習の数理統計学的な基礎付けの研究に移っていた模様で, 「確率変数の収束と大数の完全法則」を書き終えてから1年以上経った 2019年12月になって, 「機械学習に関する一考察」という表題の東大数理の談話会が あることを教わって,都合が付いたので聞きに行ったところ, 本書のこれらの準備が思いの外,初学者が基礎から勉強する上で役立ちそうでした. さらに,講演後の質疑応答で座長の会田茂樹先生が質問の1つとして 講演中に話の出たバナッハ空間値大数の法則について補足を求めたのに対して, 機械学習(の数理統計学的基礎)で扱うのがL空間の 大数の法則であって,それが「最悪のバナッハ空間」であるという 応答がありましたが, その「最悪」の意味を考察することは本書最終章のテーマです.

楠岡先生の「機械学習に関する一考察」を深く勉強したいと思ったとき, その主要部分である,Stone-Weierstrassの定理や ラーデマッヘル複雑性の勉強に時間を当てるのは何の問題もないけれども, 門前編の知識となる,集中不等式やグリヴェンコ・カンテリの定理や Lの大数の法則でつまずくのは厳しいかと思いますが, そういう次第で,本書を事前の背景知識として活用することができます. 言い換えると,本書の内容は「機械学習に関する一考察」の内容理解のための (十分条件にはほど遠いが,間違いなく)必要条件です. なお,講演で一様大数の法則と呼ばれていた定理は本書ではグリヴェンコ・カンテリの 定理と呼んでいます.

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7. 執筆に要した長い年月

複数の方々に執筆に要した時間を聞かれたので,ざっと数えた数字を記録のために 残しておきます.なお,以下の数字でわかるとおり,たいへんな遅筆で, 若い方々の参考にはならないと思います.(元々作文も発表も苦手.)

前著「Amazonランキングの謎を解く」続きの研究から派生した教科書という側面があって, いつから書き始めたと言えるか微妙なところもありますが, 基礎(というより応用?)教科書という位置づけで基礎部分を切り出した TeXファイルの最初の日付が2010年なので期間としてはちょうど9年, 原稿TeXファイルに記録した日付(ファイルをいじった日数)が約400日, あたりは比較的客観的な数字です.

ファイルを前にタイプしていた実働時間は記録がありませんが, 2000時間前後(ただし1000時間程度の誤差がある数字)と想像しています. この数字は,教科書の計算や証明のの時間は含んでいません. 特に間違い(計算用紙破棄)の膨大な時間は成果がないので, 現代的な定義(?)だと生産的時間のどの項目にも含まれない, 遊んでいた時間になってしまいそうですが, それがなければ完成に至らないと見れば執筆に不可避な時間で, それがおそらく同じ程度の時間あります. (偉い方々がよくおっしゃる, 歩きながら考えている時間などは以上の計算には含まれないけど, 捨てた計算用紙の間違いの割合から見ると, 「無駄」になった時間のほうが圧倒的に多いと思います.) 全部合わせると5000時間くらいは使ったと想像します.


6. 日本数学会年会(2019年3月)に間に合いました!

日本数学会2019年3月年会 確率変数の収束と大数の完全法則 服部哲弥 日本数学会年会(2019年3月於東京工業大学大岡山キャンパス)の書籍展示場の 共立出版社のコーナーに平積みにしていただきました. 初日昼休みに担当してくださった編集部大越さんにご挨拶に伺ったところ, 既に1冊売り上げがあったとのこと. 早速のお買い上げどうもありがとうございます!
学会で書籍展示場に立ち寄ったけど見当たらなかったとおっしゃるかた, 右の写真の赤丸の所にありました. (日本数学会は終わりましたが, まだ街の大きい本屋で実物をご覧になれると思います!) 日本数学会2019年3月年会 確率変数の収束と大数の完全法則 服部哲弥


5. 共立出版営業部さんが宣伝素早すぎて,買っていただけるようになるまで間が持たないのですが…(2019.02)

…と,このページを立ち上げてから思っていましたが,2019年2月28日時点で Amazon.co.jp/dp/4320113500の「予約」が無事「在庫あり」に変わりました. 各位応援どうかよろしくお願いします.

なお,某吉日(先日たまたま,とここは同義です)に, 横浜そごう7階紀伊國屋書店に実物が入荷していることを目視確認しました. 発売直後の今なら,特定ネット書店に限らず, 店舗書店でも実物をお確かめいただけると思います!!


4. この子の博士のお祝いに…(2019.02)

博士(おそらく)のお祝いにお送りしたところ, さっそく宣伝して下さいました:

某ことり@ktrmnm
服部先生 (@tetshattori ) からご献本いただきました。BV関数のGlivenko--Cantelliなど、ノンパラ統計でも役立つことが載ってます!
twitter.com/ktrmnm/status/1099877728323461120 確率変数の収束と大数の完全法則 服部哲弥

ありがとうございます!

周辺の方々以外には「中の人」の公開を意図しないアカウントのようで, 実は私もご本人を存じ上げませんが, 以前はご自身の発表スライドへのリンクを含む呟きもあったので, 所属住所を検索して献本差し上げた次第.無事届いて良かった(^_^)

まさか周辺以外でスライド見る人いるまい,と思われて以前はご自身の本名入りリンクを貼っていたのかもしれませんが,ビッグヒットの経済の陰に隠れて長いロングテールの文化があって,マニアックでもおもしろい内容は見に行く人がいると思います(^_^)(^_^)


3. 鋭意準備中の模様(2019.01)

このwebページを開いてから(つまり Amazon.co.jpの 「少しマニアックな確率論入門」ページが開いてから) 約1週間,初めて編集部から表紙の話がありました.(ということは, やはりまだ表紙無しだった.) いや,無事再校もすませましたし,内容はちゃんとありますので, (何なら私がいま死んでも)出版可能です. だから,Amazonページが最初で表紙が最後でも問題ないけれども, こんなに出版社営業部がAmazon中心に動いてよいのか…いえ, 何でもありません.

そういえば, Amazonのページに遅れること幾歳月(約0.5ヶ月), 共立出版社のページにも拙著が掲載されました.

追記:その後無事(表紙も含めて)完成したむねの出版社からの連絡がありました.


2. 本が先か書評が先か(2019.01)

早速追記.本より先に書評が(しかも的確…).

原啓介@kshara2009 https://twitter.com/kshara2009/status/1083136333688713217
これはかなりマニアックぽい(予想)。 8:00 - 2019年1月10日

追記:その後,完成品をお送りしたところ早速ご購入の参考になるコメント(予想ではない書評)をいただきました:
原啓介@kshara2009 https://twitter.com/kshara2009/status/1100577790548561922
新刊本『確率変数の収束と大数の完全法則』(服部哲弥/共立出版)。告白しますが、今まで大数の強法則と完全法則の違いを知りませんでした(赤恥)。解析的に難しくも面白い「マニアックな」問題を丁寧に解説した一冊。こういう本が出ることが分野の成熟だと思う。 11:06 - 2019年2月27日
原啓介@kshara2009 https://twitter.com/kshara2009/status/1100577918604853249
ただしこの本で普通の確率論に入門するには敷居が高そうなので、副題の読み方は「少しマニアックな「確率論入門」」ではなくて、「「少しマニアックな確率論」入門」かもしれない。 11:06 - 2019年2月27日


1. 表紙が先か内容が先か,Amazon webか著者webか(2019.01)

本書の表紙は(手にとっていただけることを優先して, ご経験豊富な共立出版に)お任せしてあり, どんな見た目か現時点で知りません. 編集部との連絡はまだ内容の校正までで, 表紙については,編集部とのやりとり(がないこと)から考えると, そもそも存在が自明ではありません.

いっぽう,同じ出版社でも営業部はさすが迅速, 既にAmazonのページを を開設してくださいました. (しかし,ここも,初めて見る変わった「Cover coming soon」なる表題の表紙写真. その上, 共立出版のwebにはまだ何もない七不思議.Amazonのページしかないのは, 内容は完成しているのに表紙が見当たらないという現実と真逆に, 表紙だけで内容のない本みたいでよろしくないので,) 急遽こちらのwebページを用意した次第です.

乞うご期待.ご声援よろしくお願いします.


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