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「数学通信」編集後記と支部便り

日本数学会東北支部評議員は慣例によって日本数学会の発行する 「数学通信」の編集委員を兼ねます.2006年度の4つの号の編集後記と 第4号の支部便りの執筆,12月の編集会議出席,と,編集委員とは 名ばかりの貢献(?)でしたがせっかくなので残しておきます.

1号の編集後記

2年前の編集後記に前々任者の花村昌樹先生が桜の開花のことを書かれていました. 花村先生の予言を検証するには2年は短すぎますが,それはともかく, 仙台は東京より桜の開花が2週間ほど遅くて,今年は学会の時に東京で, この編集後記の締切少し前に仙台で,2度桜を楽しむことができました. 仙台はこのあと青葉の美しい季節になります.夏は涼しく,冬は(暖かいとは 言えませんが),仙台市内に関しては東北地方のイメージに比べると雪が少ないです. こちらの店の人に「仙台市内は雪が降らない」と言われたほどです. 数学会も近いうちにあるようですし, まだおいでになっていないかたはぜひ訪れてみてください.

2号の編集後記

3年前の編集後記に前々々任者の柳田英二先生が論文の盗作の噂について 書いていました.客観性を追求する理学といえども人間のやること, 広く社会で起きることは学問の世界でも起きるのを避けられないのでしょう.

柳田先生は,数学では「盗作によって得るものが少ない」と期待しています. 期待が正しいならば,評価の高い人は評判を落としてまで不正を行う可能性は低く, 不正は影響力の小さい人や場面に限られ,結果として数学の組織がこの種の問題で 不安定に陥る危険も小さい,という理論かと思われます.しかし, 日本の大学を取り巻く環境のここ数年の急速な変化によって,集中的な資金の投入 という考えが進む中で,得るものが大きい場面が数学の世界にもときどき登場します. そういう場面では「柳田理論」の前提が崩れます. 大学における競争的資金に絡む不正の問題が新聞をにぎわせているように見受けます が,数学もその危機にさらされる時代にいるように思います.

これまで,大金に関わることの少なかった多くの数学者は深刻さを見落とす危険も ありそうです.そのような場面で組織の不安定をコントロールする, 「柳田理論」に代わる仕組みは未発見と感じますが,盗作などの不正は不当に高い 評価が目的だという面からは,周囲の評価と本人の実力実績の乖離を重大な場面で 再検証する必要はあるでしょう.不当に低い評価は受けた側を幸せにしませんが, 不当に高い評価も受けた側を不幸にするかもしれません.

柳田先生の編集後記から3年,数学の組織はいちだんと社会の難しさに巻き込まれた 気がします.社会からお金をもらって数学をやっている以上は避けられないけれども.

3号の編集後記

来年度の東北大理学研究科の数学教室主任は竹田雅好先生に決まりました. 独法化のキャッチフレーズの一つに,運営と研究・教育を分離することで 教員は研究・教育に専念できるようにする,というのがあった気がしますが, 教室を見ていると仕事の総量は独法化以降増える一方のようです. 所帯の小さい確率論グループとしては,10月から新しく針谷祐助教授を迎えた とはいえ,難儀なことです.

それはともかく,4年前の編集後記で東北支部評議員前々々々任者の雪江先生が 講演のうまさについて書かれています.私の若い頃と今を比べると, 平均的には発表が急速に上手になったと感じます.たいへんめでたいことです. 発表に気をつけない人は昔に比べて相対的に不利になったとも言える, という視点からは議論も出てきそうですが, 数学の「適応放散」の時代から時代状況がやや変わって,数学の他分野の内容も 理解する必要が増えているように思える現代では,「専門外にも連携を発信できる 講演」も仕事のうちかもしれません.雪江先生は講演の聞き手についても 書かれていますが,平均的には聴きかたの進歩のほうが話しかたの進歩より やや遅いかもしれません.もちろん,たとえば質問一つとっても, 限られた質問の時間にちょうど合った質問をするのは, 時間に見合った講演をするより難しいのは当然かもしれません.

4号の編集後記

10巻第1号の編集後記に前東北支部評議員の小谷元子先生が 「東北支部の責任評議員,自動的に『数学通信』の編集委員にもなりました」 と書かれていました.その小谷先生から東北支部の責任評議員と 「自動的に」数学通信の編集委員を引き継いで1年たちました. 前任地から移ってきて,新しい環境と立場に慣れようとしているうちに, あっという間に3年たった計算です.

小谷先生のときに,東北大の(というより,日本数学会元理事長の)森田康夫先生の さりげない助言の下,日本数学会東北支部細則の改訂が行われました. (日本数学会ホームページにリンクされています.) 支部細則の主要な内容が支部評議員・代議員の候補の推薦の手続きなので, 今年度は,次年度の東北支部評議員候補の推薦の手続きが細則に則って進むよう 神経を使いました.無事終えて,ほっとしています.結果については (rejectされていなければ)この号の支部便りにご報告を載せました. 東北支部のみなさまのご協力に感謝します.

数学通信編集委員としてはほとんど編集後記だけの貢献(?)で終わりそうで 恐縮ですが,東北支部評議員としては本年度の経験をマニュアルにして 次年度の責任評議員に申し送る予定です.次年度以降の東北支部の活動に 少しでもプラスになればさいわい,と思っています.

4号の支部便り

日本数学会東北支部2007年度評議員候補の選出のための選挙結果について

数学会定款・細則と東北支部規則にしたがって, 来年度の東北支部評議員候補者の推薦のための選挙を, はがきによる投票(10/20締切)によって行いました. 開票結果をご報告します. 東北支部会員のみなさまには,ご協力どうもありがとうございました.

有権者数272人 投票者数(はがき返信数)103人 (2名投票96人,1名のみ投票5人,白票2人,合計103人197票)

塩谷 隆(東北大学・理)98票
押切 源一(岩手大学・教育)98票
高瀬 幸一(宮城教育大・教育) 1票

この結果に基づいて,塩谷隆と押切源一のおふたかたを来年度評議員の候補として 日本数学会に推薦しました.

送付先住所リストの維持管理と更新にはできうる限りのことをしましたが, 今回4通が宛先不在で返却されました.返却されず届いてもいない場合も あるかもしれません.支部としての最終的な更新のよりどころは日本数学会名簿 ですので,所属変更やご退職等の場合は日本数学会への住所の更新のご連絡を よろしくお願い申し上げます.更新を投票はがき送付にすぐ反映させたい場合には, 東北支部連絡責任評議員(支部細則により,当面,東北大学大学院理学研究科 数学専攻所属の日本数学会東北支部評議員に該当します)にも ご連絡いただければなおさいわいです.

(2006年度日本数学会東北支部連絡責任評議員 東北大学 服部哲弥)



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