Amazonの本のランキング(順位)の時間変化の模式図に戻ります. 親ページでは1年間の動きをお見せしましたが, グラフを簡単にするためにその中の1ヶ月を切り出します.
注意: くり返しですが,図は単純化した模式図です. しかし,数字は(おおざっぱですが)誇張はありません. とある雑誌のレフェリーに 「5日間で20万位も落ちるなんて信じられない」と 言われて論文を落とされましたが, 本当に5日間で20万位落ちます. 権威ある雑誌とそのレフェリーが偏見に満ちたものであることがよく分かりました. と同時に,1位近くでは5日間で20万位落ち,そこからは同じ時間に数万位しか 落ちない,という現象の発見自体が偏見や常識を覆すような重要な 指摘であることを意味すると考えます. |
実際,手持ちのデータはとてつもなく微々たるものです. データ収集を自動化するプログラムを書く時間がとれないため, 全て手作業でデータを集めているからです. 実際,上記模式図の期間(2007年10月の1ヶ月)に 拙著「ランダムウォークとくりこみ群」のランキングのデータとして 私がとることができたのは下記左図の点だけです. (上図と重ねてみると,右図のとおり,たしかに模式図は 意外にデータを良く表していることがわかると思います.)
上記左図のデータ点から, 最初の模式図のようなことが起きていることを見抜くのは 当たり前ではありませんでした. 実際,いまでもAmazonのランキングが本当に このような模式図になっているか,は予想と言うべきでしょう. この予想を確実に実証するには,何十万位という順位を何ヶ月か しつこくデータをとり続ける必要があります.
何十万位という順位を何ヶ月かしつこく観察を続ける人はあまりいません.
もちろん少しはいます.たとえばM.Rosenthalという作家は
自身のwebで
非常に多くの本のAmazon.comでのランキングを長く追跡した観察結果を集約して
います.
しかし,これまでの観察記録は,出版社から直接聞くなどの別の方法
によって,ある長い期間内に売れた冊数を推定して,
冊数/期間=単位時間の売り上げ
を求めて,ランキング(順位)との関係を推測するという分析で
終わっているようです.
しつこい観察と数学モデルの精密な研究を結びつけた例
は無かったようです.
(そこまでしつこく精密に研究するほうが変人….)
親ページで動画をお見せしたのは, Amazonのランキングの数学モデル(stochastic ranking process)です.
めったに売れない(少しは売れる)本のランキングが上記最初の図のように なっている,というところに戻ります.いちばん目に付く 「何十万位からほとんどトップへの急上昇(グラフ急降下)」 (図の b と書いた4カ所のジャンプ) は,本が売れた(Amazon.co.jpに購入注文が入った)時刻です. 1冊売れたくらいでは1万位前後までしかいきませんが, 図のように「何十万位」を見る図では1万位も1位も大差ありません. (1万位と1位が図の上で大差ないという主張は, 数学モデルを発見した際の重要な単純化でした.) 以上の結論:
次に,本が売れていない間(たとえば図の a と書いた区間) のゆっくりした順位降下(グラフ上昇)は何でしょうか? 私は
本が売れていない間のランキング下降は 「売れないまま時間がたつので,本の人気(=本屋への貢献度)が下がる」 という意味だという説明があるようで, II のように書くと,わかりにくいようです. わかりにくいならば,ためしに次のように考えてください. ランキング(順位)は相対評価だから, その時間変化は2通りの見方があります.
もう1点,定量的に計算できるように次の単純な確率的な定義を入れます.
数学的な詳細に興味があるかたは こちらにお進みください.