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Amazon.co.jp のランキング − (非理系の)作家先生のための説明

数学や統計的な解析に興味のないかたのために, 親ページで紹介している研究成果の実用(?)部分のイメージをざっくり紹介します.


Q. Amazonの順位がどうやって決まるのかを考察してる人がいた. 数学の難しい話なんでいきなり挫折しました.
A. 一言で言うと, Amazon のランキングは, 売れ行きではなく,Amazonで最後に売れたのが何日前かを表します.
Q. 具体的には,何位が何日前?
A. 1万位ならば最後に売れたのが2,3時間前, 10万位ならば1日半前,20万位ならば4日半前,50万位ならば25日前, といった具合.
Q. 1位とか10位とか100位とかを先に書くのが普通では?
A. 1時間に2冊以上売れないと1万位より大きく上位に出ることはありません.
Q. たしかに4冊まとめ買いした時いきなり1万位切ったことあります.
A. 我々の研究は,1日に1冊しか売れない本(たとえば数学書などの専門書(^_^;) が主な対象なので,1万位未満は将来の研究課題 _o_
Q. ランキングを上げたいと思ったときは, 10冊まとめて買うよりも1時間に1冊ずつばらして10冊注文した方がいい ということでしょうか?
A. まとめ買いは,将来の研究課題(1万位を切る話)だから,確実ではありませんが, たぶんこうなります:(しばらく売れて無くて)数10万位にいた本を 10冊まとめて買うと,2時間後に一気に5000位未満にジャンプ. でもすぐに他書に追い抜かれて数日後には10万位代へ,元の木阿弥. 1冊ずつ10時間買うとその10時間の間は1万位弱をキープ. 買い終えてからは,もちろん落ちていくけど, 10冊最初に買った場合の順位を10時間遅れで後追いするので, 結果的に見栄えが長持ち.
Q. それならば,なぜAmazonはTwitterみたいに 「最後に売れたのは○日前」ってしないのだろ.
A. 我々はAmazonとコネが皆無なので意図は想像しかできませんが,
 理由1:順位のほうが皆が注目する,
 理由2:たとえば週末を挟む「○日前」と平日の「○日前」は当然意味が違うので, 全体の中での相対的な売れ行き(ランキング=順位)に直したほうが 意味を付けやすい部分もある,
 理由∞:誰かが研究して,結果的に無料で宣伝してくれるのを待っていた (まんまと罠にかかったかな?),
ということではないでしょうか.
Q. ところで,Amazon自身ランキングについては違う説明をしているようですが.
A. Amazon.comの例ですが, 長くウォッチしている人はAmazonが長い間にランキングの仕組みを微妙に 変えていることに気づいています.Amazonの公式説明は,最初に用意したものを ずっと使い続けているようで,少し観察すればすぐわかる事実にすら矛盾している 部分もあります.私が代わりに最新のシステムを回答しているかと(笑)
Q. 私の書いた本は週末に順位が上がる傾向がありました.
A. 人々が金曜の夜あたりに注文したくなる御著書で, そのランキングを土日にウォッチしているのではないかと….
Q. たとえば学術書と娯楽ではAmazonは何かのパラメータをいじくって調整してるように 思うのですが.
A. 我々の理論のもう1つの特徴は,順位変化は数学でも小説でも共通という点 です.
Q. 重ねて,本当でしょうか? 細かい調整をすればするほど,第3者がまねできないから, Amazonにとってデータに価値が生まれませんか?
A. これまで数学書しか調べてなかったので,分野で区別していない, という主張は予想です.ただ,少なくともある範疇で正しいと信じています.
Q. 価値が出れば,ランキング資料を出版社などに売ることができます.
A. 売るなら,売り上げデータを直接売ったほうが高く売れると思います. ランキングの持つ情報は売り上げデータを超えるものではありません. (でも,出版社から何か聞けたら,ぜひ真偽のほどを教えてください!)
Q. 私の書くような日陰の分野はランキングも低く設定していないでしょうか? 私がAmazonの責任者ならばそうします.
A. 次の問と一緒にお答えします(^_^)
Q. 俺の書くような重要分野はもっとランキングが高くて当然なのに, 見るに堪えない分野の本とランキングが近いのは, Amazonが大衆娯楽優先で恣意的に操作しているのではないか?
A. Amazonの技術者がランキングを操作するためのプログラミングの手間を考えると, 私は分野別の操作をしていないほうに賭けます. コストに比べると,Amazonはランキングの数字をいじる価値はほとんどありません. 私としては,Amazonには,経費節減して,いちばん単純な, 「最後の購入時刻がどれくらい前か,の順番」でやってほしい ところです.そしたら,私はAmazonは偉い,と,もっと宣伝します!
Q. ランキングが売り上げ総量だけで決まるなら聖書が1位だよ.
A. はい.累積総量で順位を付けているのでないことは確かです. 『最近の売れ行き』で順位を付けたい,というのがAmazonの意図でないか, とAmazon.comのsales rankを長くウォッチしている人が指摘しているようです.
Q. 『最後に売れた時刻』は『最近の売れ行き』とはやや違うのでは?
A. はい.1時間に複数冊売れる,1万位くらい以内が定位置の本の場合は, 今まで書いてきた我々の理論とずれる可能性が高いです. ただ,Amazon.co.jpは1時間に1度しかランキングを更新しないので, 購入後の経過時間は1時間より短い単位ではどのみち計れません. 逆に,ほとんど売れない本では,よく考えると 『最後に売れた時刻』順と『最近の売れ行き』順は等しい ことがわかります. ところで,Amazon.co.jpにある本の99% は1万位から落ちこぼれています. (200万点超をカタログしているし,実質でも100万点くらいあります.) ですから,我々の理論はAmazon.co.jpの99% の書籍のランキングに関して, 単純な割にはよく合う,と私は確信しています.
Q. 99%の本のランキングを説明する理論といわれても, どうしても上位の本に目がいく.
A. 「まず,大多数の標準的な本について調べ,そこからのずれを見極める ことで上位の≪特殊な≫本の振る舞いを見つける,」というのが科学者 としてまっとうな道である,という信念を持って研究しています. 上位の本についての予備的な観察によれば, Amazon.co.jpは少し細かい計算をして順位を決めているようです. 数年前と現在でランキングのアルゴリズムを少し変えた気もします. また,Amazon.co.jpランキングよりもAmazon.com のsales rankのほうが 少し複雑な計算をしているようです. この辺りは,まだ,ウォッチング中,というところです. でも,よけいな計算に時間をかけるよりは,単純な方法のほうが Amazonにとっては良い,というのも事実です. (Amazonさん,コンタクトしてくださったらお教えしますよ.(^_^))
Q. 現時点での予想でいいから,上位について一声!
A. 興味本位な数字は出したくないけど,大安売りで.当たるも八卦当たらぬも八卦. 売れない本についての研究からえいやっと外挿すると, 安定的に10位をキープしている本は数秒(5秒以内とか)に1冊, 100位なら約1分に1冊,1000位なら20分に1冊, くらい売れているのではないでしょうか. トップスリーについては,その時々で違うから,全く何も言えません.
Q. Amazon側ではなく,著者サイドで,本当よりも売れているように見せる方法は あるでしょうか?
A. ある,と思います.ただ, あざといことを防ぐためにAmazonがランキングの計算を複雑に するのはコストにも見合わないし,いたちごっこになるだけです. そういう事態が見つかった場合は,他の,そういう人の宣伝にならない形で, 化けの皮をはがして差し上げるべきでしょう.
Q. Amazonのランキングがそれを見ている人たちに与える影響については わかるでしょうか? ランキング高位であることが購買意欲に関係するかどうかです.
A. 実は,今整理している研究課題にきりを付けたら, 次にとりかかろうと思っている問題です. 数学的にはそういう効果を取り入れたモデルを, 少し新しい数学的「技」を追加することで研究できると睨んでいます. 問題は,それを実地に応用するためには, 人々の「ランキングと購買意欲の関係の強さ」に当たるパラメータを データから求めないといけない点で, 現状では精度が良くないようです. できれば,何か(数学だけでなく)社会的意味のある結果を出したいのですが.
Q. 全書籍売り上げのうちAmazon.co.jpのシェアについてはどうでしょうか?
A. 残念ながら我々の研究では無理です. 我々がAmazon.co.jpについてつかんだ秘密(?)は,書籍売り上げの利益の大半は 膨大な蔵書(『ロングテール』)ではなく,誰もが知っている少数のベストセラー による,ということです.Amazon.co.jpはロングテールビジネスモデルの成功例 ではありません. 逆に言えば, いつも1,2位を競う本の売り上げを詳しく調べないとAmazon.co.jpの書籍売り上げ 総量はわかりません.ところが,Amazonのランキングは1時間に1度しか更新 しないので,これらの1時間に何冊も売れる本の情報は得られません. もっとも,トップクラスの目立つ数十冊ですから,おそらく,出版関係の利害関係者 の方々やマーケティングのプロの方々ならば伝統的な直接的な方法でそれらの 売り上げを把握しておられると思います.私自身がそういう数値をいただければ うれしいな,と思っているところです.

謝辞

このページの作成にあたって, 響由布子さんから 数多くの有益なご意見や資料・情報をいただきました. どうもありがとうございます.


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