日本語トップ
親ページに戻る

1変数に近い特別な状況 − 臨界点が x軸上にある場合.

W(x,y) が y について1次の項を含まないとき, ある一つの正数 x に対して x軸上の点 (x,0) が w の臨界点になるので, このとき問題1は D - {(x,0)|x>0} に w の臨界点がないための十分条件を求めることになります.

このとき 0<z<=1, x>0 に対して z (Wx2/Wy)(x,x2z) > 1 が 成り立てば, y/x2 は D-{(x,0)|x>0} に おいて, grad W が定義する 力学系 (Xn,Yn) のリャプノフ関数になります.即ち, (Xn,Yn) が D-{(x,0)|x>0} に あるとき, Yn+1/Xn+12 <Yn/Xn2, が成り立ちます. 従って特に,w の臨界点がないための十分条件になります.

以上に基づいて次の問題を考えます.

問題2.

F(x,y)=(y/x2) (Wx2/Wy)(x,y) と おく. 問題1の設定に加えて W(x,y) が y について1次の項を含まないとき, 0<y<=x2, x>0 に対して F(x,y) > 1 が 成り立つための,「良い」十分条件を求めよ.

W の y への依存が単項式のとき問題2は次の意味で 解決しました.

命題 (19981226).

問題2において W の y への依存が単項式のときを考える,即ち, W が問題1の設定を満たし, かつ,正係数1変数多項式 f と定数 b>0, k>=0, k'>=2 を用いて W(x,y)=f(x) + b xk yk' と書けるとする. f の項のうち最低次数を L,最高次数を H とおく.

このとき,次のいずれかが成り立てば F(x,y) の D における最小値は D の境界(無限遠を含む)でとる.

  1. k=0 または k'=2,
  2. L >= 4 beta/(k'+2) または H <= 4 beta/(k'+2) (ここで beta=k'+(k/2) とおいた),
  3. 以上以外の場合で, x f''(x)/f'(x) = 4 beta/(k'+2)-1 の(唯一の)正根を x=x0 と するとき,f'(x0) x01-2 beta >= b k (k'+2)/(k'-2).

注.

  1. 命題 (19981226) の十分条件は,2次元領域 D の内部で2変数関数 W の 詳細な性質を調べる必要がないことに注意して下さい. 即ち調べるべきことはいずれも高々1変数関数の問題に帰着しています. そして D の境界において F(x,y) > 1 ならば y/x2 は リャプノフ関数になって, D の内部では grad W の固定点 (w の臨界点) がないことを保証します. この意味で w の臨界点の D における唯一性の 「容易に検証可能な」十分条件になっています.
  2. 問題1の設定の下では F(x,x2) > 1 なので, D の境界のうち y=x2 のところでは自動的に望むべき性質が 成り立っています. dSG上のrSAPのくりこみ群の一般化 − 臨界点がx軸上にあり,ポテンシャルがyの単項式の場合
  3. 命題 (19981226) で陽にリストされている条件は 問題の量が D の内部で最小にならないことを保証するだけなので, D の境界におけるチェックが必要です. 特に「x の大きいところ」を調べる必要があります. (W の最高次付近を調べればいいので,検証可能性は保たれています.)
    例えば, W(x,y)=x3/3 + 4 x2 y3 /3 は命題 (19981226)の仮定のうち H <= 4 beta/(k'+2) を満たしますが, D における w(x,y)=W(x,y)-(x2+y2)/2 の臨界点は, (1,0), (0.939352,0.283324), (0.734382,0.46355) の3つです (右図の黒丸.3つ目は図の中程の黒い部分の中にある極小値). 実際,この例では, F(x,y) = (1+8y3/(3x))2/(4y) -> 1/(4y), x->無限, となるので,y > 1/4 のとき x の大きいところで左辺が 1 より 小さくなり,y/x2 は D でリャプノフ関数ではないことが分かります.


W の y への依存が単項式でない場合は次のことしかわかっていません.

dSG上のrSAPのくりこみ群の一般化 − 臨界点がx軸上にあり,ポテンシャルがyの単項式の場合

命題 (19981018).

以下のいずれかの場合,問題1の設定の下で無条件(余分な条件なし)に 結論(D における w の臨界点の唯一性)が成立する:

  1. W が 同次式のとき,
  2. W が4次以下の項よりなる多項式のとき.

注.

  1. 実際は W が 同次式のとき,問題1の設定の下では y を含む項は単項式になって,前掲の命題 (19981226)に含まれます. 例えば,3次同次式  W(x,y;a,b,c,d) = ax3 + bx2y + cxy2 + dy3  の場合, 問題1の条件を満たすのは b=c=0, a,d>=0, かつ 3a2>d の場合ですが, このとき w(x,y)=W(x,y)-(x2+y2)/2 の 第一象限における臨界点は (0,0), (0,1/(3d)), (1/(3a),1/(3d)), (1/(3a),0) (右図の黒丸)となり, D にあるのは最後の一つだけとなります.
  2. W が4次以下の場合は,問題1の条件下で y について1次の項は 許されません.従って単項式でない問題2の十分条件の例 (係数に自明でない任意パラメータを含む現在唯一の例)です.


親ページに戻る inserted by FC2 system