特別の記述がない限り,以下の訂正で 「(yyyymmdd版)」 とあれば, yyyy年mm月dd日とそれ以前のバージョンに共通する訂正.
バージョンは印刷したときの1ページ目右上の「v」で始まる数字(日付).
用意した小問(2)の解答が(1)を用いていないことに 2018年3月12日のツイッターで質問を頂きました. (2)でヘルダー不等式を経由すれば(1)が使えるとのご指摘でした.
たしかにヘルダーの不等式を用いれば(1)が(2)を証明する上で利用できますが, 用意した解答に比べて数学として優れた部分は見当たりません. (何かご存じの方がおいでならばご教示下さい!) 以下,用意した解答に不適切な点がないと仮定して想像を書きます.
用意した解答のように単純な期待値の単調性と正値性で解ける問題に, 基礎不等式とは言え本来証明を要するヘルダーの不等式を使う発想に 疑問を感じて調べたところ,この問題は (院試出題当時はまだ数少なかった 和書の基礎教科書の代表である)西尾真喜子「確率論」(実教出版1978年) 四章§4一様可積分性の例2の証明をそのまま出題していることに気づきました. 小問(1)(2)(3)は同書の証明の手順です.
西尾真喜子の同書は直前の§3でヘルダーの不等式を含む基礎不等式を証明して
いるので,ヘルダー不等式の使用は他の不等式の使用と同等の手間なので,
同書ではヘルダー不等式経由はまったく自然ですが,
院試問題では背景と切り離されていて問題がすべてなので,
誘導するならば他の同程度以上にやさしい解を許すものが望ましく,
小問(1)を西尾真喜子の証明への誘導とするならば,
私が用意した初等解答を排除する意味では不自然な誘導です.
出題者は院試問題に期待されるほどの時間を割かなかったのかもしれません.
(20180322)