測度論(ルベーグ積分)は成立して2世紀たっていない,若い数学ですが, 既に数学の広い分野で使われるだけでなく,数学以外でも広く基礎事項として 用いられています. コルモゴロフが全測度1の測度を確率と呼び,積分を期待値を呼んだので, 現代の確率論は測度論の直系の子孫です. 前世紀終盤から日本語の良い基礎教科書もたくさん出てきたので, 確率論の勉強には困らないと思いますが, 私も(少しマニアックな)教科書を書きました. 行きがけの駄賃で 確率論も勉強したいと思ってくださった向きには,ご一考いただければさいわいです.
ルベーグ積分関連の大学院入試問題は,出題傾向など入試対策には重宝しますが,試験問題は採点,したがって出題意図の制約があるからか,出題に偏りなどがあります.測度論・ルベーグ積分論の基礎事項の学習,特に到達度や理解の穴などの確認には,標準的な基礎教科書の内容に合わせて作題しヒント(解説)や解答を付けた「難問克服 ルベーグ積分」もご検討よろしくお願いします.
1998年頃,立教大学のT.A. (teaching assistant)制度に基づいて 当時理学部数学科大学院生だった津田稔朗君 (現,第一生命,アクチュアリー,企業年金のエキスパート) の協力を得て,測度論の講義の自習用演習教材のために, 大学院入試問題集から測度に関する問題を抽出して解答例とともに 編集・配列し始めました. (収録範囲が1997年度までなのは問題を抜き出したのがこの頃だったためです.) しかし,T.A. の協力を得たとはいえ, 難しいところは服部が担当せざるを得ず, 大学院入試問題は難易の差が著しいために少数の問題に多大の時間をとられる 結果になり,また, 初学者の自習の役に立つように解答の記述を配慮するなどのためには 服部の関与する必要のある時間が多すぎて, 収集した範囲の1/3をまとめるのが精一杯だったようです. なお,当時同僚だった落合啓之さんには早速にいろいろ指摘をいただきました.
2005年に東北大学で再び測度論の講義を担当させていただけることになったのを機に, 測度論1年分の講義のうちの前半半年分の範囲の問題については解答を ひととおり完成させるべく, 収集した問題のなかほどの1/3弱の解答を,今回は一人で作りました. 講義の機会のなかった6年間に, 解答方針・解答体裁・記号や言葉遣い・何を基礎事項と考えるかなどの判断が 自分の中で変わったらしく, 小見出しの配列や問題の分類や配列(収集範囲さえも), 解答の書き方や問題や解答への注,に違和感を覚える部分も生じました. 6年前に付けた解答も再吟味が必要かもしれないとは思いましたが, とうていその時間はとれないので, 以前に完成した分の再確認・再調整は最小限にとどめました.
2008年前期(特に2月頃と7月頃)落合啓之さんに第3分冊までについて 多数の指摘をいただきました. この間の半年ルベーグ積分の講義を担当されたそうで, そのおこぼれに預かった形です. 受講生諸君をさしおいて,遠隔地にいる私が落合先生の講義の恩恵に 一番あずかったかもしれません.
2008年夏休み(8月から9月にかけて),3年半ぶりに,残っていた第4,5分冊, 全体の1/3強,にとりかかりました. 問題を選び,第1分冊をwebに公開してからちょうど10年, 177問全てに解答を付け終えました.がんばった主な理由は以下です.
ひととおり解答をつけましたが,改めて見直すと,解答どころか分類も不完全で, 動かしたほうが良いものがあることも具体的に承知しています. 解答例は教育効果を意識して院試での解答例よりも長い解説的な内容も込めるよう 努力しましたが,長期にわたる細切れの時間の蓄積の結果なので,ムラがあります. 教科書の基礎定理の証明を問う出題には,使い慣れた古い教科書の証明を参照して しのいだ場合もあります.新しい教科書 (たとえば, 吉田伸生,「ルベーグ積分入門 --使うための理論と演習」,遊星社) も出ています. ざっと拝見したところ,吉田さんの教科書の問と重複する問題は少ないようですが, 基礎定理の証明を問う出題は,新しい教科書に,(初学者向けの)より良い証明が 見つかるかもしれません. それらを含めた改訂は,需要が大きければ,ということにして, 今回は歴史的経緯を踏襲します.(「さぼります」と同義,と受け取って くださって差し支えありません.)
2009年以降の追記: 2008年夏にいちおうの完成を宣言してから半年過ぎ以降,おかげさまでwebで反響が大きくなっているように思います. (追記の追記(2020/08/20): この項目は当初「2009年の追記」だったのが,2010年台以降の追記もぶら下げたために順序がおかしくなったので,2009年以降の追記として,見つけた/連絡を頂いた順に並べ直します.)
服部哲弥先生
373 :132人目の素数さん:2009/04/12(日) 18:21:46 東北大かどっかの先生が ルベーグ積分の院死の問題 300くらい回答付きでまとめてたなぁ。 2chのどっかのスレのリンクで言ったんだが、 どこだったかしら 374 :132人目の素数さん:2009/04/12(日) 19:02:27 >>373 服部哲弥でぐぐれ
「300問」はどこかで話が大きくなっているようですが, 噂が広まっているようで,ありがたいことです. 自由にご利用下さい. (検索に引っかかったのはこのレスだけですが,これ以前にも2chで 評判になっていたのでしょうか….)
67 :132人目の素数さん:2009/09/27(日) 14:14:42 とりえずはっとく ttp://web.econ.keio.ac.jp/staff/hattori/inmon.htm
とりあえずどうもありがとうございます (^_^) とりあえず有益と考えてくだされば,自由に広めていただければさいわいです.
74 :132人目の素数さん:2009/11/21(土) 23:09:36 ルベーグ積分なんて適当にぐぐったサイトで学習すればいいじゃん。 わざわざテキスト購入する価値のあるもんでもないし。 75 :132人目の素数さん:2009/11/21(土) 23:29:59 んだ。服部さんとことか見てからにすりゃあ、いいべ 76 :132人目の素数さん:2009/11/22(日) 06:42:56 >>75 服部乙
テレンス・タオ著,舟木直久監訳,乙部厳己訳, 「ルベーグ積分入門」,浅倉書店,2016.
演習問題もたくさんありますが,ざっと見たところ,短くまとめた本文を補完する 重要な基本命題的結果を(巻末回答の無い)問の形で呈示しているようなので, 玉石混淆で推測出題意図雑多なこちらの院試問題集との重なりは殆ど無いようです.
おかげさまでこのページは私の知らないところで緩やかに広まっていて, 「実は利用しました」と後から教わることが少しずつ増えている気がします. その分,解答例が「永遠の暫定版」(ソフトウェアのいわゆる`as is'提供)に とどまっていることが忘れられて,確定版扱いになる危惧を感じています. 出題意図の推測やすっきりした解答について明示的に未解決としているところも ありますので,腕に覚えのある方にはお気づきの点を (期末試験等の出題のついでにでも, ツイッターアカウント @tetshattori などに) ご一報ご協力いただければたいへんさいわいです.
立教大学の T.A. 制度に基づいて理学部数学科大学院生の津田稔朗君の協力を得て,
解析学1の講義(1998年当時まで)の練習問題として,
大学院入試問題集から測度に関する問題を抽出して解答例とともに
編集・配列したものに基づく資料です.