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年々よりきちんと答えることを要求する例.


以下,「気象予報士試験問題と正解」(気象業務支援センター)に基づく.
  1. 傾圧不安定説に基づく低気圧の発達過程を問う問題.

    平成6年度第2回実技試験共通問題[問題1]問1(2)の解答例は, 「暖気が北側へ,寒気が南側へ回り込む」となっていて, 解説では特にその書き方に対する指摘はないが, 平成8年度第1回実技試験1問2(3)の解答例は, 「前面では高温の場で上昇流,後面では低温の場で下降流」 となっていて, 解説では 「(混同して)前面では暖気移流で上昇流域,後面では...などと書かないこと」 となっている.

    傾圧不安定説では,

    1. 傾圧有効位置エネルギーが渦有効位置エネルギーに変わる 前面暖気移流後面寒気移流の時期, (このとき,静力学関係によって渦管が西に傾く,)
    2. 渦有効位置エネルギーが渦運動エネルギーに変わる 暖気上昇寒気下降の時期, (それぞれ温暖前線と寒冷前線に対応,)
    を経て低気圧が発達すると同時に, 南北温度差による不安定が解消(熱の伝搬)が起きるとされる. 平成6年度ではこの二つの段階を意識しなくても解答できるのに対して, 平成8年度ではその差を意識しているように読み取れる解答を 書かないといけない,というのである.

  2. ω(オメガ)方程式に基づいて総観規模上昇流を説明させる問題.

    平成6年度第2回実技試験一般予報[問題2]問2(1)の解答例は, 「(高度500hPaにおける)正渦度移流(により上昇流)」となっているだけだが, 平成8年度第1回実技試験1問2(2)の解答例は, 「500hPaに強い正渦度移流, 850hPaに強い暖気移流,凝結の潜熱放出による加熱(が上昇流の理由)」 となっている.

    ω方程式は, 上昇流ω=dp/dt (圧力で高度を測ったときの速度,微分は偏微分,負が上昇, 高層天気図で P-VEL と略記されるもの,Pはpressure, VELはvelocity) への寄与が,

    1. 絶対渦度移流の鉛直シア,即ち,上層で正渦度の移流, (絶対渦度はコリオリパラメータと総体渦度の和, 台風以外ではコリオリパラメータは定数と思ってよい. 移流は,準地衡風近似では地衡風を vgと書くとき, v>gとナブラ=(d/dx,d/dy,d/dz)の内積を作用させること, つまり,上流(西)の渦度が大きいため,時間とともに上流から流れ込んで 来る状態を表す. 鉛直シアは高度についての偏微分という意味で,上層ほど大きいとき 鉛直シアが正.)
    2. 層厚(=層の厚さ=1/密度)の移流,即ち,暖気移流, (気体の状態方程式から,1/密度=RT/pだから,等圧面(p一定)の間で考えれば, 1/密度が大きいとは温度が高いということだから暖気移流.)
    3. 熱供給, (なお,平成8年度第1回実技試験1問2(2)の解説に書いてあるω方程式の 熱供給の項は次元が合わないので間違っている.多分, -1/p とナブラの積 を植字の際に落としたと思われる.)
    の3つの要素からなることを記述している. 平成6年度ではこのうち渦度移流だけに注目しているが, 平成8年度では3つの要素全てを答えさせている.


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