上記参加者学生諸君が共同で, 実証用の土台として,2012年12月の衆議院総選挙のデータに基づいて 2013年7月(予定)の参議院総選挙の与野党議席数(いわゆる予想)を計算しました.
野党間の選挙協力がない場合の結果を公示前の2013年7月2日に, 以下に書き留めておきます.
2013年参院選選挙区予想 | 与党 | 野党a | 野党b | 野党c | 野党d | 他 |
---|---|---|---|---|---|---|
大政党に控えめな計算 | 47 | 18 | 5 | 2 | 1 | 0 |
大政党に強気の計算 | 57 | 14 | 2 | 0 | 0 | 0 |
選挙結果(7/22追記) | 51 | 10 | 2 | 4 | 3 | 3 |
現実には野党間選挙協力は無くなった気配を感じますが, 「仮に野党間選挙協力があったとしたら」という考察が本題なので, 学生諸君の計算が進み次第追加表示する予定です.
事前に数値を公開することの狙いは,
です.なお,
追記(20130711): 本来の研究の趣旨が,野党選挙協力の効果なので, 2野党連携でいちばん顕著なa+bの連携と, おそらくいちばん話題になったb+cの連携の 概算結果を並べておきます.
2013年参院選選挙区 | 与党 | 野党a | 野党b | 野党c | 野党d | 他 |
---|---|---|---|---|---|---|
選挙協力のない場合 | 53 | 16 | 2 | 1 | 0 | 1 |
選挙協力a+b(実現せず) | 50 | 21 | 1 | 0 | 1 | |
選挙協力b+c(実現せず) | 52 | 16 | 4 | 0 | 1 |
注:公示前に掲げた最初の表の数値は,半年以上前,2012年12月衆院選結果時点の 数値のみを用いた上に,参議院選挙区の定員も前回参院選時点のものを 使っています.ただし,定員を修正しても数値としては大きな変動はありません. 追記の表は,定員を修正済みの上に現実の公示時の立候補者数を考慮した計算です.
20130722追記:選挙結果を最初の表に追加します. 半年前の情報でも9割近く合ったようです.
政党間の選挙協力は,協力ゲームの理論としてみると,単調性はあるが優加法性はないので,研究が比較的少ないクラスです.4人の諸君は,2012年の衆院選と2013年の参院選の実際には起こらなかった(が,報道などで取りざたされた)野党間の選挙協力について,政党間の協力ゲームとして実際に実現しうる配分が可能なことを具体的に計算しました.イデオロギーからは取りざたされない協力関係にむしろ政党の協力の利益があり得ることを示し,政党の技量の成熟のありようを示唆したと思います.
実際には理論上可能な選挙協力が実現しなかったことについては,2012年については(既に有権者の支持は無くなっていた)野党に現職議員が多すぎて,政党間の協力ゲームの下部構造としての議員個人の利益調整がつかなかったこと,2013年については,もはや協力の効果が十分大きいとは言えなかったことで説明がつくことを見出しました.協力ゲームの理論の現実の問題への応用についてはプレーヤーという単位をどのように選ぶかという重要な前提があることを示した点は大きな意味があると考えます.
ロングテールビジネスの可能性の研究で最大の障害は実際のデータを得ることです. (個別には小規模な)多数の項目の統計的な分布を集計する必要があることから, 質の良いデータ収集は(「中の人」でない限り)一般に極めて困難です. (服部の研究は ランキングという公開情報から数学を用いて分布が得られるという指摘.)
山下君は,そのようなデータを引き出せるいくつかの実際の例を見つけて, 観測期間の長さ(「窓」)の違い(ストックとフローに相当する違い)による 分布の差や, べき分布で当てはめた場合の指数がテール側でロングテールビジネスを否定する 方向に悪くなる傾向などを指摘しました.