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数理物理学 服部哲弥
2006年 4年・大学院
「数理物理学 − ランダムウォークとくりこみ群」
レポート課題
- (4/26出題 締切5/17.)
教科書p.338 定理F.16(中心極限定理)を証明せよ.
(教科書程度の分量でかまわないが,出題の趣旨は,中心極限定理を理解する,
ということと,特性関数と弱収束の定義と両者の関わりを覚えることにあるので,
できるだけ趣旨に添って教科書の補遺Fの該当部分を勉強してください.)
- (5/24出題 締切6/14.)
Zn(たとえば平面 n=2 で可)上の原点を出発点とする
self-avoiding paths (SAP) の本数Ck について,
- 実際に数えて k=1,2,3,4,… に対してCkを求め,
- 数列 μk=Ck1/k, k=1,2,…,を図示し,
- 講義で証明した n≦μ≦2n-1 との関係を図で確認し,
- 一様分布(各SAPの重みを1/CkとするSAP上の確率測度)による
変位の指数 Ek[|w(k)|2] を計算し,
- k に対する変化を両対数グラフに表示して,(n=2の場合に予想される)
傾き3/2 と比べよ.
- (6/07出題 締切7/12 =レポート最終回.
)
教科書p.263 定理B.1(recursionが定義する正則関数列が正規族であること)を
証明せよ.
提出先:講義時か数学棟事務室横服部のメールボックス
レポートへのコメント
初回提出者26名,3回とも提出してくださったのは24名(うち4年生3名).
興味を持ってくださってどうもありがとうございました!
最優秀レポートは,院生部門ではレポート3でgasket上のself-avoiding walkの
本数と変位を実際に数えてくださった澤田宰一君(下記レポート2でも
最長の計算をしてくれました),学部生部門ではレポート2の2次元格子上の
self-avoiding walkの本数と変位の数え上げで最長だった渡邊真由子さん,で,
どなたも異存はないかと思います.
レポートの優劣があるのに比べておおざっぱで申し訳ありませんが,
成績は,3回とも提出してくれた人はA,2回はB,1回はC,を基本と
したいと思います.(AAもあるのでしたっけ?あとは適宜微調整します.)
レポート2へのコメント
Self-avoiding walk の本数と2乗変位,「最長不倒距離」(正解だった歩数)発表!
- 2次元,本数 C(k): k=7 まで正解した澤田宰一,田中守,渡邊真由子の3氏
- 2次元,平均2乗変位E[ |w(k)|2]:
k=6 まで正解した小山田亮太君と甲斐崇君
- 一般次元,本数 C(k): ただ一人尾崎直人君だけが挑戦して k=5 まで正解
参考までに,2次元の正解は:
歩数 |
k |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
本数 |
C(k) |
4 |
12 |
36 |
100 |
284 |
780 |
2172 |
5916 |
変位の2乗和 |
Σw |w(k)|2 |
4 |
32 |
164 |
704 |
2716 |
9808 |
33788 |
- |
同 期待値 |
E[ |w(k)|2] |
1 |
2.67 |
4.56 |
7.04 |
9.56 |
12.6 |
15.6 |
- |
注: E[ |w(k)|2]= Σw |w(k)|2 / C(k)
私も確かめましたが,元の論文
A. J. Guttmann,
On the critical behaviour of self-avoiding walks ,
Journal of Physics A: Mathematics and General 20 (1987) 1839-1854,
とも一致しているので,大丈夫でしょう.なお,単行本
N. Madras, G. Slade,
The self-avoiding walk , Birkhäuser,1996,
の Appendix C の Table C.1, C.2 にも上記論文の表が引用してありますが,
2乗変位の和の表 C.2 の d=2次元の n=3歩目の数値 124 は
164 の誤り.元の論文は正しいので,本に書き写すときの間違いでしょう.
(元の論文は 4 で割った値を載せているので, 4倍するときに間違えたか?)
この本は,原典の引用がたまに乱暴で,この表についても同じ著者の別の
(polygonの本数の)論文を引用していますが,上記がこの表の原典.
n次元の本数 C(k)は
k≦3 では C(k)=2n (2n-1)k-1
C(4)= |
2n(2n-1)^3-4n(n-1) |
C(5)= |
(2n-1) C(4) - 8n(n-1)2
|
C(6)= |
(2n-1) C(5) - 8n(n-1)2(2n-1)-4n(n-1)(8n-13)
|
3次元のときは上記論文の表と合うことは確認しました.
- 科目: 応用数理特選A・特論A
- 場所: 総合棟801
- 日時: 前期水曜1限
- 教科書:「ランダムウォークとくりこみ群」
服部哲弥著,共立出版,2004年.
講義も成績(レポート)も教科書に沿って行います.
資料室には2冊しかおいてもらえませんでした.(「洋書に比べれば安いから
各自で買ってもらいなさい」と言われました.)
余裕がある諸君は借りたまま独占しないで買ってください.
- 概要: Path上の確率測度(確率連鎖)とそのくりこみ群による解析についての
入門的な講義を行う.
- 目標: Path上の確率測度という数学的対象になじむこと,および,
くりこみ群という(まだ数学的に完成していない)概念への親近感を持つこと,
を目指す.
- 方法と進度:
教科書に沿って講義する.
前半では,主に単純ランダムウォークの初等的な数学的事実の紹介を通して
確率論の基礎事項の入門的解説を行う.
後半では,20世紀の理論物理学におけるもっとも重要な理論の一つであるくりこみ群
というもののみかた,つまり,複雑な形の path を,大まかな構造(ぎざぎざ)に
細かい構造(ぎざぎざ)を付け加えていくことで作る,というみかた,をpath上の
確率測度という題材の中で紹介する.空間が1次元の場合や特別なフラクタルの場合
には,これらのことがある程度初等的かつ数学的に紹介できる.
- 成績評価:
レポートによることを考えているが,詳細は初回の講義時に決めたい.
単位取得の基準は,期限内にレポートを提出することと,以下の点を学修すること:
(1) ランダムウォークの数学についての基礎知識を(再)確認することで,
確率論の数学的なおもしろさを(再)認識すること.
(2) 確率連鎖におけるくりこみ群の例を通して,くりこみ群の数学的可能性について
将来考える際の一つの手がかりを得ること.
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